「何、この匂い。」
「雲雀さん。」
ボンゴレの部屋に入って来た雲雀さんは、鼻を摘んで顔を顰めた。
その目が俺を捕らえた瞬間、整った顔はさらに歪んだ。
「…気分が悪くなる。帰る。」
「え、あっ、ちょっ、雲雀さん!?」
ボンゴレが立ち上がって制止するのも構わず、雲雀さんは部屋を出て行った。
そして俺は、ボンゴレが何か言ってくれているのにも関わらず、その場で立ち尽くして泣いてしまった。
(なんて、みっともない)
それでも、胸が痛い。
雲雀さんに出くわすなら、来る前にシャワーを浴びてくればよかった。
(女の人の香水は嫌いだって、そういえば前に言ってたのに)
自分の香水と混じった匂いは、さらに酷いものになっているだろう。
ただでさえ香水が嫌いな雲雀さんが、あんな顔をしないはずがないのだ。
(また 距離が 、)
それからしばらく、俺の涙は止まることがなかった。