気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
(何、あの臭い)
袖で鼻を押さえ、鼻腔に残った僅かな香水の香りすらも消してしまいたかった。
いつものあの子の匂いではない、誰か知らない女の臭い。
(吐き気が、する)
人工的な香りに耐え切れずに、今や鼻だけではなく口も覆ってしまっていた。
こみ上げる吐き気を堪えて、少しでも部屋から離れようと、それだけを考える。
考えているはずだったのに、抜けない。
(ムカつくイラつく腹が立つ気持ち悪い何これ、一体どうして)
ふとそこで一つ気付いたことがあった。
元々女の臭いに嫌悪感を持っていたが、それ以上に今はその臭いを纏っていたのがランボだという事実が腹立たしかった。
その理由が、彼の匂いのかけらも残っていなかったことだと気付いて、思わず足を止める。
(………まさか、そんな感情を僕が持っていたなんて)
きっと彼は僕の言葉に傷ついただろう。
部屋を出る直前の泣き出しそうな顔を思えば今頃は大泣きしているに違いない。
ちくりと胸が痛んだが、彼の涙で臭いが洗い流されればいいのにと強く思った。
そのゆびさきがしめすもの