狂っているなんてことはずっと昔から知ってる

 

バスタブをく染めて Dante side

 

こくりと赤ワインを一口。
ワインの香りと湯に浮かべられた薔薇の香りが混ざり合い、少し気持ちが悪くなった。
今日来た依頼をこなした際、報酬と一緒に貰った豪勢な赤い薔薇は全てバスタブへと放り込まれた。
さすがに茎の部分はとったが、花弁は崩れず形を保っている。
薔薇を送った意図は読めなくも無いが、依頼者とはあえて気付かない振りをして笑顔にありがとうの一言で終わらせた。
あの女は確かにいい女ではあったが、俺にしてみれば物足りない。
それでも以前の俺ならキスの一つぐらいくれてやった。

「・・・・・俺もイカレてるな」

自嘲気味にそういって、ワイングラスを傾ける。
湯に一滴落ちて、広がり、赤みを残して消える。
今度はワイングラスに残っていた全てのワインを入れてみた。
全体的にほんとうに薄い赤になり、興味本位でボトルに残っていたワインを全て注ぐ。
ワインの香りと薔薇の香り それに加えて、何か別の香り

「何をしている」
「・・・・帰ってたのかよ」
「今しがたな。」
「人が使ってんのに入ってくるのは、マナー違反だろ」
「お前がそれを言うな。・・・・・・で、何をしている」

同じ顔、同じ瞳、同じ髪の色
けれどまとう雰囲気はま逆の、双子の兄。
俺の大好きな人

「見てのとおり、薔薇浮かべたワイン入りの湯に浸かってんだよ」
「ワイン・・・・・?」

バスタブの外に置かれたボトルと、香りで俺の言葉が本当だと信じたらしい。
疑い深いのはいいことだが、俺の言葉くらいは信じて欲しいものだ

「イカレてるな」
「言われなくても分かってるさ」

ため息混じりに言われた言葉を肯定すると、より不機嫌そうな顔になった。
俺はどうやらバージルを逆なですることは得意らしい。

「ダンテ」
「なんだよ」
「・・・・・・・・・お前はやはり赤が似合う」

予想外の言葉を投げかけられて息を呑む
近づいてくる手にも気付かず、気がついたときには唇が重ねられていた。

「・・・・・・・なんだよ」
「薔薇、自分で片付けろ」
「それはわかってるっつーの。それより、今の何で」
「自分で考えるんだな」

青いコートを翻して、バージルはさっさと出て行ってしまった。
一人残された俺は薔薇の花を一つ握り潰す

この薔薇が蒼かったら、湯にワインが入っていなかったら、あいつはなんて言ってどうしたのだろう?

 

(なんて茶番を考えて自嘲して薔薇の花弁を一枚食べた)

 

案の定、美味いわけがない

 

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髪は濡れたままバージルのところへ向かったら、顔面にタオルを投げつけられた

 

 

Vergil side