ぐすぐすと泣き崩れているあの子を見つけた。
(また彼に泣かされたのか)
頭によぎるのは自分が執着する家庭教師の子供の姿。
あの子はいつも勝てないと知って居るのに挑んでは負けて泣かされている。
(馬鹿じゃないの)
とは思うけれども、ぐすぐすと一人で泣いているところを見ると思わず傍に行きたくなる。
どうしたの?と話しかけて、あの潤んだ瞳でこっちを見る彼の顔が見たくなる。
もしかしたらいじめたくなってしまうかもしれないけれど。
(ランボ)
愛しいあの子の名前を胸の中で呼ぶだけで、口には出さなかった。
少し離れた場所で、泣くあの子を見る僕の目は一体どんな色をうつしているだろうか。
欲望にまみれて淀んだ目をしているに違いない。未練を断ち切るように踵を返してあの子に背を向ける。
数歩進むと、進行方向から駆けて来る沢田綱吉が目に入った。
きっとこの先の角を曲がればあの子に気が付くだろう。そして 彼を慰めるのだろう と思って
(理不尽すぎる)
その様子を想像して 胸に苦い痛みが走った
(だからといって僕が彼に声を掛けることは許されないと思えてならない だって彼は望んでいないだろうから)
きっと僕からの慰めの言葉は きみをみじめにさせるだけ