俺がどれだけ背伸びしようと、10という年齢差は縮まらない。
身長が伸びても、喋り方が変わっても、女性の扱いを覚えても、10年という歳月には叶わない。
(あの人は10年前に既に、俺のやっていることは終えてるから)
取引先のマフィアのボスとの対談を終えて、疲れきって帰宅した。
ボンゴレ曰く、向こうのボスから俺を取引相手にして欲しい、といわれたそうだ。
年下の俺を舐めているのかと思ったけど、実際に会ってみればむしろ気に入られているようだった。
(まさか、あのファミリーのボスが女性だなんて思わなかった)
年下の異性が好みである人らしく、随分と触られたように思う。
自分の香水の匂いに、取引相手の香水の匂いが混じっているような気がして気持ち悪い。とはいえ、何とか取引は無事に終らせることが出来た。
10年前の雲雀さんに近づけただろうか。俺と同じくらいの年だったはずの10年前、雲雀さんはボンゴレ10代目の最強の守護者として名を馳せた。
それは今も変わらないけれど、昔の雲雀さんの強さにすら、俺はまだ追いつけてない。それならせめて、戦闘以外の事だけでも近づこうと努力した。
だけど、取引はこなせても書類の整備はまだ上手く終えられない。
ミスをしないようにするのに精一杯で、どうにもスピードが上がらない。
「……雲雀さん」
雲雀さんと同じ守護者の指輪を見て、小さく呟く。
「俺は貴方に追いつきたい」
唇が震える。
追いつくことが出来たなら、きっと傍に置いて貰える。
何よりも憧れるあの背中の横に、並ぶことが出来る。
それを夢見て、俺は今日も貴方の姿をなぞります。
(もっと、もっと近づいて追いついて、貴方の視界に俺を入れてもらえますように、いつか認めてもらえるその日まで)
まちます。いつまででも