「良守?」

 

何か用?と続けて問う座ったままの兄貴の前に立ってみた。
着物が似合うといえば聞こえがいいが、洋服は全く似合わないのが兄貴。
その立ち居振る舞いが着物を着るとより際立つことを知って居る人は沢山いる。
そんな兄貴の中で俺だけが知ってる兄貴はあるんだろうか、なんて、さっきまでぼんやりと考えていた。

 

「つーわけで、俺しか知らないような兄貴のことって、なんか無い?」
「何で急に?」
「何となくだよ。」
「ふーん……そうだなー、ゴミ捨て場でぶっ倒れたこととか?」
「そういうんじゃなくて……」

 

ここではっと気が付く。
兄貴のいいところが知りたい なんてまさか言えるわけ、ねぇ。

 

「………やっぱ、いい。」
「何だ…ホントに珍しいな。何かあった?」
「別に。」

 

踵を返して背中を向ける。
次の瞬間腰を掴まれて引き倒されて、兄貴の胡坐の上に座り込む形になった。

 

「何すんだよ!」
「こういうこと?」
「は?」

「俺、良守にしかこんなこと、しない。」

 

至近距離の兄貴の顔に思わず赤面してしまった。
つかなんてことをいいやがるこの馬鹿兄貴

 

うれしい じゃない か

 

 

 

 

脳髄から本能まで愛してよ!

 

 

 

 

 

御題作者:モニカさん