「あのさ 実はその話したいことがあって」
前に立っている兄貴の背中に語りかける
返事が無いのは幸いだなんたってこっちは一杯一杯で流れが途切れたらそこで終わりになるんじゃないかって思うくらい切羽詰ってしまってるんだからよし言うぞ行くぞ言うぞ
「俺 ずっとまえから 兄貴がすきだ」
ああ言ってしまった兄弟という垣根を越えてしまったっていうかちょっと待てよ兄貴って俺の事嫌ってるみたいなこと前に言ってなかったっけいやアレは作戦だったって兄貴は言ってたわけなんだしえっでもあの目って本気だったよなうわぁやべぇ泣きそうどうしよう俺嫌われてるのに告っちまったよもうだめだもうおしまいだやばい消えてなくなりたい
「良守?」
兄貴の声にびくっと身体を揺らして顔を上げる。
首だけで振り返ったアイツは呆けたような表情で、呟いた
「今、何か言った?」
ブチッ と頭の中で何かが切れた音がした
一世一代の告白を聞き逃した男