「早くしてくださいよ」
「まだ食べ初めてから2分も経ってないんだけど」
「食べさせてあげましょうか」
「え」
鬼弟子の何気ない一言に思わず蕎麦を食べる手が止まる。
こんな優しいことなんて今まで一度だって言われた事があるだろうか、いや、皆無。
あーん、なんてしてもらえるかも、と思うとドキドキしてきて顔が熱い。
「どうぞ、芭蕉さん」
「あ、あーん」
ドキドキが最高潮に達した次の瞬間、口の中に入りきらないほどの蕎麦の固まりが突っ込まれた。
(ああそうだった何がどうなったとしてもこの子は鬼のように非情な弟子なんだった優しさなんて求めちゃいけないよ!)
すみません、手がすべりました