動作確認中 オールグリーン

記憶選別処理 オールグリーン

機能判別 オールレッド

 

 

渇望

 

 

「……………」

大学へマスターが行っている間に、パソコンと僕をコードで繋ぎ、簡単な調整をする。
調整と言ってもただの確認作業で、時間間隔などが狂わないようにするためのものだ。
いつもなら異常は見られないのに、機能判別で引っかかった。

少しの間をおいて、目を閉じる。
万が一の為に、パソコンにバックアップを残しておこう。
壊れる、とかそういう事には関係は無いが、以上の原因がわからない場合、全ての記憶を消去される可能性がある。
念のため、週に一度のペースでバックアップを残すことにした。

 

「…イト…カイト…カイト!!」
「っわ、はいっ!?」
「何だよ、寝てたのか?一人で寝るなんて珍しいな」

お前いつも一人じゃ眠れないとか言ってるのに、といいながら、マスターは僕の頭をくしゃりとなでた。
気持ちいいけれど、それとは違う感覚がぞくりと胸の奥から湧き上がる。
この感情はなんだ?理解できない。
もしかしたらコレが機能判別で引っかかった原因なのか?

「カイト?どうかしたか?」
「…?なんのことですか?」
「……なんでもないならいいんだけどさ」

マスターに気付かれてはいけない。
壊れたかもしれない、という事になれば、僕は修理の為に戻らなければならない。
あの場所に戻れば、此処に戻ってこれるかもわからない。
何せ試作品のアンドロイドなんだから。

「…カイトも恋ってするんだよな、そういえば」
「それが人の持つ感情であるなら、すると思いますよ。」

僕達は人の感情を学習しますから、と言うと、マスターは複雑そうな顔で笑った。

「多分、カイトの好きと俺の好きは違うんだろうな」
「違う…?」

何が違うのか、マスターは教えてくれなかった。
今の僕にわかることなのか、少し考えてみたけれど、わからない。
そもそも、僕はまだ恋というものを認識したことが無いのだから、わかるはずもないんだけれど。

「マスターの好きは、どんな好きですか?」
「んー?えーと…その人と居ると幸せー、ドキドキ、とか、嬉しい、とか感じたり、触ったりしたらなんかこう、抱きしめたくなったり?」

嬉しい 幸せ
だきしめたくなったり

「他には何かありますか?」
「人の好きっつーのは、たいてい性欲も入んだよ。キスしたいとか、それ以上も、ってな。」
「マスターも、ですか?」
「俺はそういう欲に疎い人間だから、あんまないよ」
「ああ、だからマスターの部屋にそういった本がないんですね」
「テメー何時の間に俺の部屋あさりやがった……?」

す き

カチッと、頭の中で何かがはまったような音がした気がした。

 

「…マスター、俺、」
「俺?カイト、一人称変わってねー?」
「マスターの事好きかもしれない」

マスターは飲もうとしていたコーヒーを口から吹き出した。

 

(だって貴方と居るといつも幸せで嬉しくて、頭をなでられれば抱きしめたくなって)

 

貴方の全てを俺のものにしたいと思うんだ

(これが恋じゃなかったら、一体なんと言う名前の感情なのか教えてください)







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カイトが自覚しました。
一人称は元々は「俺」なんですが、マスターは敬う対象なので敬語を使って「僕」にしてた。
でも恋してるって気付いたから、敬語を思わず解いちゃった、みたいな感じでお願いします

※2008/8/11:誤字修正