「そういえば、カイトって俺の何処が好きなわけ?」

 

ソファーの背にもたれながらこっちを見ているカイトに、ソファーで仰向けに寝ながらなんとなく俺が聞いた。

 

 

 

観点

 

 

 

「言った事ありませんでしたっけ?」
「……聞いた覚えが無い。」

 

好きだ好きだと毎日のように言われてはいるものの、明確に「何処何処が好きだ」と言われたことはない…はず。
記憶力が悪いから忘れてるだけかもしれないけれど、確かに聞いた覚えは無い。
別に特に気になるというわけでもないけれど、なんとなく知りたいわけで。

 

「なあ、俺の何処が好きなの?」

 

カイトをじっと見ると、かあっと顔を赤くした。
ええっと、その、なんて口ごもりながら目を泳がせるカイトを見て、思わず笑みがこぼれる。
やべぇ。面白い。

 

「えっと……や、優しいところです。」
「他には?」
「ええっ?」

 

困ったような表情でこっちを見るカイトに、にやにやとした笑みを浮かべながら問いかける。
悩みながらも答えようとする様子に、なんとなく悪戯心が湧き上がってきた。

 

「そのまま合計10個になるまで言ってみようか、カイト。」
「じゅ、10個も?えーっと、まず照れ屋さんなところと」

 

カイトが一つ指を折った。
照れ屋って…俺、そんな照れてばかりいるかな。

 

「甘えたがりなところと、寂しがりやなところと」

 

さらに二つ指を折る。
甘えたがりでも無いし、寂しがりでもない気がするんだけど。
寧ろそれはカイトのほうじゃないのか?と考えて、思う。

あれ? 俺のほうから近寄ってるほうが多くない?

 

「えっと、綺麗に笑うところと、さらさらした髪の毛と」

 

カイトの右手が拳になる。
笑うところはともかく、髪の毛ってどうなんだよ。
そういえば、カイトってなんか俺の髪の毛触るの好きだっけ。

 

「声も綺麗だし…あと、肌がもち肌でさわり心地がよくて」

 

左手の指が二本折られる。
ちょっと待て。肌ってお前何時の間に触ったんだ!?
ああ、そういえば前にホラーゲームをして風呂に入ったとき、ひっくり返ってカイトが助けに来たんだっけ。
ぎゃー!そういえばあの時俺素っ裸だったんじゃん!カイトに見られた!全部!!

 

「それと、一緒に寝てくれて、僕の事好きって言ってくれて」

 

さらに二本が折られる。
う、わ。すげー照れる。
今更だけど、まさか添い寝することとか、好きって言ったことまであげられるなんて。

 

「最期に、マスターはマスターだから大好きです!」

 

きっぱりと言ったカイトの表情は満足そうだ。
俺としては、まさかこんなにすんなり言われると思ってなくて、赤面した顔を何とか隠そうと躍起になっていた。

ああ 俺ってすげー愛されてる

 

「マスターはマスターだからって、もし俺がカイトのマスターじゃなかったらどーなってたんだよ」
「あ、そういう意味じゃなくて、マスターがそういう人だから大好きっていう意味です!」

 

もしマスターじゃなくても好きになってましたよ。と断言するカイト。
もう見てられなくて、両手で顔を覆い隠す。
なんだってこういうところでストレートに言うんだ、こいつは。
悪戯をしようとした罰か。ごめんなさい。

 

「マスター、マスターは?」
「へ?」
「マスターは僕の何処が好きなんですか?」

 

ちら、と指の隙間からカイトを見ると、凄く期待を込めた目で見ている。
なんか腹立つから、苛めてやる。

 

「犬みたいなところと、バカみたいに笑うところと」
「あっ、酷いマスター。バカだなんて。」
「くるくる表情が変わるところ」
「そんなに喜怒哀楽激しいですか…?」

 

眉をひそめて、考えるような表情になる。
さっきまで怒ったような表情で、その前はにこにこ笑ってた。
これが表情がすぐ変わるといわずになんと言う。

 

「マスターマスター五月蝿いところと、俺の事結構わかってくれてるところと」

 

あれ

 

「記憶なくなってても俺の事好きって言ってくれたことと、気が付くと傍にいる、とか」

 

カイトの好きなところ。と考えると、次々に頭に浮かんでくる。
最初は苛めようと思ったのに、思い出せば思い出すほど嬉しいことばかりで。

 

「俺がして欲しいこととかわかってるところと、頭なでる手が優しいところと」

 

止まらないほどすらすら出てくる。
好きの感情。

 

「いつも、俺の事考えててくれる」

 

俺、何時の間に

こんなにカイトのこと、好きになってたんだろう

 

「…マスター、どうしよう。」
「何が。」
「僕、恥ずかしいぐらい嬉しいです」

 

そう言って照れて笑うカイトを見て、俺も嬉しくなった。
ずっと俺を好きって言ってくれてた気持ちに見合うかわからないけれど、でも

少しでも"好き"を返せたかな なんて

お前にも、伝わってたらいい な

 

「マスター、マスター。」
「うわっ、カイト上に乗るな、重い」

 

ソファーの背を乗り越えて、カイトが俺の上に乗ってぎゅうっと抱きついてきた。
重い、とは言うものの抵抗はしない。
カイトはそれが、俺が許してるという意味だということを知っている。
ぱっと上げたカイトの顔が、凄く至近距離にあって、一瞬めまいがした。

 

「マスター、キスしたいです。」
「は!?」
「していいですか?」

 

そう言って、カイトは目を細めて顔を近づけてきた。

ちょっ、ふざけんなこのバカ!盛ってんじゃねぇ、調子に乗るな、落ち着け!

って言いたいはずなのに、声が出なくて

ばくばくと鳴る自分の心臓が五月蝿くて、ぎゅっと目を瞑った次の瞬間

ふに、と柔らかい唇の感触

 

(ああ、もう 俺はいつもコイツのペースに巻き込まれっぱなしだ)

 

目を開けると、嬉しそうな顔をしたカイトがいて。

ただでさえ赤い顔が、もっと赤くなったことが分かった。

 

 

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らぶらぶ。