ぐっすりと、僕の右隣で眠っているレン。

反対側を見ると、ぐっすりと眠っているマスター。

 

僕、最初一人で寝てたはずなんだけどなぁ……?

 

 

 

朝も昼も夜も

 

 

 

「カイトー、肩もんで。」

「えぇ、またですか?たまにはメイコとかにも頼めば良いのに……」

「頼んでみろ、見返りに酒を要求されるから。」

 

マスターがパソコンに向かい合ったまま零した言葉に、なんとなく納得してしまった。

ミクは力が弱いし、リンは肩もみというよりはローラーでぐりぐりと押すというのが正しい。

レンは、何故かマスターを思いっきり嫌っている。

ボーカロイドは普通ならマスターには好感を持つはずなんだけどなぁ。

 

「カイトさん、アイス一緒に食べない?」

「食べる!」

「カイト!お前は肩もみ。」

「えぇーっ……」

 

レンがひょこっとドアから顔を出してアイスを持ってきてくれたのに、マスターの鬼!

そう思いながら断ろうとした、その時

 

「マスター、あんまりこき使うと嫌われますよ?」

 

レンの一言に、淀みなく続いていたキーを叩く音がぴたっと止まった。

少しの間のあと、マスターは小さく、

 

「アイス食ったら、肩もみな。」

 

と、僕にアイスを食べることを許してくれた。

やっぱりマスターは優しくて良い人だ!

 

「ありがとうございますっ!じゃあ、食べようか、レン。」

「うん。いちごとチョコ、どっちがいい?」

「うーん……レンは?」

「僕はどっちでも良いですよ。カイトさん、好きなの選んでください。」

「ホント?ありがとう。レンは優しいね」

 

よしよし、となでてやると、レンが恥ずかしいのか頬を赤く染めて、目線を逸らした。

可愛いなぁ、なんて思っていると、マスターがぼそっと呟いた。

 

「リンが見たら気絶すんだろーな。余りにもキャラちげーから」

 

その瞬間、レンがぎっとマスターを睨みつけ、マスターはそれを無言で受け流した。

え、何?今、マスターが何か変なことを言ったの?

おろおろしていると、レンがふっと突然柔らかな笑みを浮かべた。

そして、マスターの背中に向かって、一言。

 

「べたべたべたべたいつも引っ付いてるマスターよりはマシですよ。あんまり独占すると嫌われますよ?」

「それはコッチの台詞だっつーの。ミクもリンもメイコもいんだろーが。毎回毎回カイトにまとわり付きやがって。」

「男同士で遊びたいときだってあるじゃないですか。そもそも僕はカイトさんと一緒にアイスを食べてるだけです。」

「毎日5回もアイスタイムはいらねーだろーが。唯でさえお前らの電気代で金飛んでんだから控えろっつーの」

「えええっ!?そんな、マスター!アイスは減らさないでくださいー!!」

 

ずごい早口で、何を言ってるのかわからなかったけれど、マスターがアイスを減らすことだけは聞き取れた!

思わず口を挟んでマスターにすがり付いてしまったけれど、マスターはとびきりの笑顔で僕の頭をよしよしとなでてくれた。

 

「大丈夫、カイトのアイスはちゃーんと取っておいてやるからな」

「よ、よかったぁ……」

 

ほっとする僕ごしに、マスターがレンに勝ち誇った笑みを浮かべているのに、僕は気付かなかった。

すると、ぽん、と肩に手が置かれ、振り向くとそこにレンが居て

 

「よかったね、カイトさん。明日からも一緒にアイス食べれますよ」

「うん、よかったね。」

 

そういって微笑む僕らを見て、マスターが鬼のような顔をしているとはまったく予想が出来なくて。

「マスター、」と部屋に入ってきたミクがマスターをみて、小さく悲鳴を上げて出て行ったのを見て、僕は不思議に思っていただけだった。

 

「カイト、ちょっとこっちこい。」

「わっ!」

 

マスターに引っ張られて体勢を崩し、マスターの膝の上に座る形になってしまった。

恥ずかしくて顔を赤くしてじたばたすると、マスターは僕の頭をぽんぽんと撫でる。

それを見て、レンが何故か悔しそうな顔をして、

 

「カイトさん、僕も混ぜてください!」

「えぇっ!?」

 

僕に飛びついてきて、僕はまた体制を崩してレンに押し倒される形になってしまった。

その後もぎゃあぎゃあとマスターとレンに引っ張られ、

 

「ちょっと、マスター!ミクに何見せた……の……」

 

と、メイコがリンとミクを連れてきた時、

マスターの下に僕が押し倒されてて、そのマスターに後ろからのしかかるレンという構図になっていて

メイコが固まって、ミクとリンの目を塞いで、

 

「……わかったわ。しばらく入ってこないから。」

「えっ?ちょ、ちょっとメイコ……っ!?」

 

そう言って、引きつった表情でぱたんと扉を閉めた。

何だか嫌な勘違いをされたような気がする、ものすごく!!

 

「マスター!!メイコ、絶対何か勘違いしちゃいましたよ!?」

「いや、あながち間違いじゃないんじゃね?」

「そうですね。でも相手はマスターじゃなくて、僕です。」

「黙れガキ。ショタっ子のクセにマセてんじゃねーよ」

「マスターこそいい年した大人のクセして、その子供と張り合ってどうするんです?」

「そんなこと言ってる場合じゃないですってー!!早くメイコに誤解を解きに行かないとー!!」

「あーもう無理だろ、あれ。」

「そうですよ、カイトさん」

「無理じゃないですー!!二人してなんでこういう時だけ意見が一致するんですかっ!?」

 

 

これが、僕らの日常です。

 

 

 

 

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ほのぼのと言うよりはギャグに走った感が否めない作品になりました←
匿名Aさんのリクエスト、ボカロが全員出るほのぼの系(カイト、レンメイン)でした。

リクエスト、どうもありがとうございました!!