ぽかぽかと暖かい日のあたる縁側。
すやすやと眠っているのは、可愛い恋人。
陽だまりの中で
確か、仕事を待っていたはずだった。
帰ってきて直ぐにスーツは脱ぎ捨て、普段着の黒の着物を身に着けた。
いつもなら帰ったことに直ぐに気付いて駆け寄ってくるランボの姿が見られなくて、部屋をのぞいてみたりした。
結局見つけられなくて、何処に行ったんだかと雲雀が小さく溜息をついて廊下を曲がったとき、やっと見つけた。
すやすやと縁側で寝息を立てて眠るランボの姿。
「………」
無防備すぎる、と雲雀は思う。
マフィアなら、見晴らしの良いところに姿を晒すのは危険だと考えるのに、どうにもランボは危機感が無い。
雲雀の屋敷を見つけたとしても攻撃してくるような無謀な者は少ないとはいえ、少しは考えるべきだ。
小さく溜息をつくと、ランボの寝ている横に座った。
「ランボ」
柔らかく名前を呼ぶが、起きる気配は無い。
ふわふわするランボのクセ毛が風に揺れているのを見て、雲雀は指先でくるくると髪を弄る。
「ランボ。起きて」
改めて優しく名前を呼ぶと、微かに瞼が動く。
一瞬ぎゅっとしかめるように眉を寄せたあと、ゆっくりと瞼が開いた。
翡翠色の目が雲雀の目を捉えたのを見て、雲雀は柔らかく微笑んだ。
「おはよう、ランボ。」
「…あれ…雲雀さん?…」
なんとなくしゃべり方が間延びしていのを見ると、まだ寝ぼけているのかもしれない。
そう思って、雲雀はランボの鼻をぎゅっと摘んだ。
「ふわっ!わ、えっ!?」
「起きた?」
直ぐに手を離すけれど、ランボは驚いてがばっと飛び起きて鼻を押さえた。
悪びれる様子も無く雲雀が話せば、ランボはじとっとした目で雲雀を睨んだ。
「なんで鼻摘むんですか…!」
「寝ぼけてたみたいだから。手ごろな位置に鼻があったし。」
「でも、摘まないでください。」
拗ねたような表情を見せるランボを見て、雲雀がクスクスと笑い声をもらす。
ランボはほんのりと頬を赤く染めながら、雲雀に近寄って話しかけた。
「お仕事は終わったんですか?」
「うん。」
「じゃあ、今日は一日俺と一緒ですか?」
「そうだよ。」
ランボの言葉を肯定してやると、顔がぱあっと明るく輝いたような笑顔になる。
雲雀はそれを見てくすりと微笑をもらし、頭を撫でてやった。
「嬉しいです、すごく」
「そう。よかった」
気持ちよさそうに目を閉じて呟く言葉に相槌を打ちながら、雲雀はそうっと顔を近づけた。
ランボは気付かないまま、気持ちよさそうに頭を撫でられたままで
ちゅ、と音を立てて雲雀がキスをすると、ランボは顔を真っ赤にして目を開けた。
「い、いきなり何するんですかっ!!」
「目を閉じたから、キスして欲しいのかと思って」
「違いますっ!」
「嫌だった?」
「……嫌じゃないですけど…」
ごにょごにょと口ごもりつつ呟かれた最期の言葉に、雲雀は機嫌よさそうにランボの頬に触れた。
ぴくっと一瞬震えるランボ。
なんとなく小動物を連想させるランボを見ていると、ついいじめたくなってしまう。
そうっと顔を近づけると、ランボが恥ずかしそうに目を閉じた。
唇には触れず、すり、と鼻を擦り合わせると、ランボがまたびくっと身体を揺らした。
そのまま口元に笑みを浮かべながら、雲雀はランボの額へとキスをする。
「………っ……い、意地悪!」
顔を真っ赤にして額を押さえるランボを見て、雲雀はまたクスっと笑った。
(本当に初心で、純粋で)
愚かなほど。
僕を好きになるなんて、可哀想に
「ランボ、おいで」
両手を広げて促すと、ランボはおずおずとその両腕の中に納まった。
ぎゅ、としがみついてくるランボの手の片方を取って、キスをする。
やっぱりランボは顔を真っ赤にして、慌てたように手を引っ込めて。
「そんなに恥ずかしい?」
「雲雀さんは、愛情表現がストレートすぎます!」
「そう?イタリア人のほうがすごいと思うけど」
「雲雀さんは日本人なのにはっきりしすぎです。」
「君はイタリア人なのに、随分と恥ずかしがりやだね。」
からかうように言えば、頬を赤く染めたまま、拗ねたようにランボがうつむく。
さり気ない仕草で腰を緩やかになで上げると、びくっとランボの身体が揺れた。
「ひ、雲雀さんっ」
「どうしたの?ランボ」
「っ……わ、わかってるくせに!」
意地悪!と真っ赤な顔で言うランボを見て、少しいじめすぎたかな、と雲雀はランボの頭を撫でてやった。
恥ずかしくてしょうがないのか、目尻に浮かんだ涙を指で拭い取ってやり、頬にキスをした。
「たまにはこういうのもいいかもね」
少し物足りない気もするけれど、と雲雀は呟いて、ランボの唇に触れるだけのキスを落した。
暖かく心地よい日の光のような君を僕はきっと手放せない ごめんね
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匿名Nさんリクエスト、10年後ヒバラン、日本家屋でのんびりしっぽり です。
なんていうかせっかくの日本家屋を生かせてない気がしますorzリクエストありがとうございました(^^)