カイトが、目の前でおいしそうにアイスを食べている。
バニラ、好きなのか?でも昨日、イチゴ味のアイスおいしいって言ってたし…。

 

カイトの味の好みについて考えているうちに、カイトはアイスを食べ終わっていた。

 

 

時が経つほどに

 

 

「マスター、どうしたんですか?」
「え。え?あ、うん。」

 

視界一杯にカイトの顔が広がって、初めてカイトがアイスを食べ終っていることに気が付いた。
カイトは何処か不機嫌そうで、でも表情は無表情で。

 

「ぼーっとしてると、転びますよ?」
「カイト、俺今座ってるんだけど。」

 

時々ずれたことを言うカイトの言葉に突っ込みを入れて、小さく息を吐いて立ち上がった。
カイトはスプーンと空になったアイスの容器を台所に置きに行くらしい。
ひらひらと、カイトの長く青いマフラーが目の前をよぎる。

 

「………マスター、どうしたんですか?」
「え?あ。」

 

自分の部屋に行こうと思ったのに、何故かカイトの後をついてきていた。
少しの間を置いて、一番最初に思い当たった理由を呟いてみる。

 

「カイトと居たかった…?」
「え。」

 

カイトがピシッと固まって、次の瞬間ボッと顔を赤らめた。
なんかかわいいなぁ、と思いながら、首をひねりつつ自室へ向かう。

無意識のうちに後を追いかけるほど、俺はコイツにはまってるらしい。

 

「あの、マスターっ!」
「え?」

 

自室に入った瞬間、後ろからカイトが抱き着いてきた。
驚くと同時にバランスを崩して、ベッドの上に倒れこむ。
ゴッ、と、壁に頭をぶつけた音がした。…痛い。

 

「何すんだよ、カイト……」
「す、すみません、つい…」

 

嬉しくて、と言うカイトは俺に顔を埋めていて、どんな顔をしているのか分からない。
多分顔を隠そうとしているんだろうけれど、耳まで赤かったら意味もないと思うんだが。

 

「カイト、いったん離せ。」
「は、はい。」

 

素直に俺から離れたカイトを見てから、体勢を立て直してベッドに寝そべる。
カイトが不安そうに俺を見ているけれど、俺はあえて気付かないフリ。

 

「あ、あの、マスター…。」
「カイト、俺と一緒にいたい?」
「は、はいっ!勿論!」
「んじゃ、おいで。」
「へ?」

 

ばさっ、と掛け布団を持ち上げて、ぽんっと俺の隣を叩く。
途端にカイトの顔が真っ赤になって、目をふらふらと動かし始めた。
かわいいなぁ、と思いつつ、からかう為にわざと抽象的に言葉を選ぶ。

 

「来いよ、カイト。」
「あ、あの、まだ昼なんですけど…」
「だから、昼寝。」
「え、えと、でも、そのっ」
「俺、寝たいから。一緒に。」
「ま、マスター……」

 

わかりました、と言って、カイトがおずおずとベッドに入ってくる。
掛け布団をかけてやると、もそもそとカイトが俺にくっついてきた。

 

「カイト、なんか顔赤くね?」
「きっ、気のせいです!」
「そ?」

 

分かりやすい虚勢をはるカイトを見て、クスクスと笑いを零す。
それに気付かないほどテンパッてるカイトは目を白黒させていた。

 

「んじゃ、夕方になったら起こしてな。」
「へ?」
「へって……何?だから昼寝っつったじゃん。」

 

カイトは一瞬ぽかんとしたあと、みるみる真っ赤になった。
さっきとは違う意味で赤面したのが分かるけれど、あえて触れないでおくことにする。

 

「マスターの意地悪。」
「意地悪で結構。」
「……おやすみなさい、マスター。」
「ん、お休み。」

 

カイトをしっかりと抱きしめて目を閉じる。
ボーカロイドにしては暖かいな、と思いながら、
心地よい眠気に身を委ねた。

 

 

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ラブラブカイマス。マスターがベタベタしたかっただけ。
匿名Aさんのリクエスト、マスカイで2828する話でしたw

リクエスト、ありがとうございました!