「ねぇ、あの子知らない?」
珍しく雲雀が綱吉の部屋に着たと思ったら、第一声がこれだった。
君となら
「あの子って…ランボですか?」
「そう。」
ちょうど部屋に居た山本と獄寺は顔を見合わせ、首を傾げる。
綱吉はそういえば、と小さく呟く。
「ランボなら、もう直ぐ此処に来るはずですよ。書類をリボーンから持ってくるようにお願いしたんで」
「そう。待たせてもらうよ」
「え。」
すとん、とソファーに座った雲雀を見て、三人は見合わせた。
普段なら直ぐに部屋を出て行ってしまうのに、珍しい。
「あの、雲雀さん……ランボに何の用なんですか?」
「どうして君に言わなくちゃならないの」
「あ…すみません」
一蹴されて綱吉は顔を引きつらせた。
小さく溜息をついて、獄寺から書類を受け取りサインを始める。
その時、遠慮がちなノックの音のあと、扉が開いた。
「ボンゴレ、書類貰ってきまし…あれ…雲雀さん」
「遅いよ」
その一言に、ランボは慌てて綱吉に書類を渡す。
ぽかんとして獄寺と山本が見るなか、ランボは雲雀の前で手を合わせた。
「ご、ごめんなさい!この後直ぐに行くつもりだったんですけど…」
「僕を待たせるなんていい度胸してるね。君から誘ったのに」
「す、すみません……!」
誘った、と言う単語に、三人が顔を見合わせる。
そういえば、雲雀は今日一日を完全にオフにしていた。
ランボは午後から出掛けると、妙にうきうきしていたのを思い出す。
「えーと…二人でお出かけなの?ランボ」
「はいっ!映画に付き合ってもらうんです!」
もしもコーヒーを飲んでいたなら、思い切り噴出していただろう。
あの雲雀が映画!?と、三人は同時に思って再び顔を見合わせた。
その様子が気に喰わなかったのか、雲雀は眉を寄せて三人を睨みつける。
「えーと……雲雀さん、そういうところ嫌いなんじゃ…?」
「当たり前でしょ。」
人が群れてるところにいくなんて、と小さく呟き、舌打ちをする。
ランボはそれを聞いて少し肩を落してしまった。
それを見て、もう一度雲雀が舌打ちをする。
「君が行くって言ったから行くんだよ。早くして」
「え、あ、はい」
ランボの腕を引いて、雲雀が足早に部屋を出て行く。
バタンと閉まった扉を見て、三人は三度顔を見合わせた。
「……今のって」
「ランボが行くから行くって……普通、無いよね」
「………惚気なんじゃね?」
ぼそ、と山本が呟いた言葉に、獄寺と綱吉ははっとする。
つまり、今目の前であの二人はいちゃついていた。
「映画見るってのも、デートだろ」
「あ」
「…あの雲雀が?」
「だから、あの雲雀が映画見るぐらいなんだから、相当……」
少しの間が開く。
「……これ以上、深く考えないことにしよう。」
「……はい。」
「そうだな……」
三人は、黙々と次の仕事に移っていった。
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さり気ない惚気とはこんな感じでよろしかったんでしょうか…。
ランボが行くなら、嫌いなところでも耐えられる、という感じです。雲雀さん甘いです。←
ありすさんのリクエスト、ヒバラン十年後で、さり気なく周りに惚気る雲雀さんでした。リクエスト、ありがとうございました!!