「あ、雲雀さん。見てくださいよ。俺、大吉!」
「そう。良かったね。」
御神籤
そんな紙切れになんの意味があるのかと、くだらないと思いながら、綱吉に言われて一枚引いたおみくじ。
人込が酷く綱吉がどこかへ埋もれていなくなりそうな人の群れに、苛立ちは募る。
珍しく携帯に電話をしてまで僕を誘う綱吉の熱意に負けて来たけれど、やはり初詣なんてものに来るべきではなかった。
来た時点で、既に運は悪いと思ったのに。
「雲雀さんはなんだったんですか?」
「……別になんだっていいだろ」
「あ、もしかして大凶だったとか?」
「……………」
「え……まさか、本当なんですか?」
しまった、と言うような表情をして僕を見る綱吉に腹が立つ。
そもそも僕はこんなもの信じていないし、どうでもいい。
心の底からそう思っているけれど、そんなあからさまな表情をされるとイライラする。
「で、でも、ある意味凄いですよ。大凶って、大吉ぐらい出ませんから。」
「そう。」
特別運が悪いって事じゃないのか。
それなら綱吉の方が悪そうだけど、と思っていると、綱吉は僕のおみくじを手に取って、読み始めた。
許可した覚えはなかったけれど。
「えーと……あっ、恋愛運はいいことかいてありますよ!」
「他は?」
「……健康運……大怪我に注意……仕事運……徹夜に注意……金運……大金を落す……」
「…………」
怪我は日常茶飯事だし、風紀委員の仕事で徹夜することもたまにある。
金はもともと持ち歩かないから、あまり変わりない気がする。
こんなものか、なんて思っていると、綱吉が泣きそうな顔でおみくじを見て居る事に気が付いた。
「何?」
「恋愛運はいいんですけど……雲雀さん、怪我しないでくださいね……」
「………わかった」
泣きそうな表情をこっちに向けられて、一瞬本当に泣くのではないかとらしくもなく動揺してしまった。
ただでさえ大きな目なのに、あまり無くと目が取れてしまうんじゃないだろうか。
なんて到底ありえないことを考えながら、綱吉に目を移す。
「恋愛運……今思っている人が一番。そのまま思うが吉。……雲雀さん、好きな人いるんですか?」
不安そうな綱吉の目を見て、そういえばまだ明確に好きだと言った事がないことに気が付く。
今更好きだと言うのもはばかられて、何か他の話題を探そうと頭を回転させた。
「……君のおみくじはどうだったの?」
「え?えーっと……」
慌てて広げられた綱吉のおみくじを覗き込む。
恋愛運。
「……今、隣に居る人が運命の人?」
少しの間が開いて、視線がゆっくりとこっちに向けられる。
「……………」
「……………あはは……」
どうしよう、と思っている事がありありと伺える。
そんなに僕が嫌なのか。
「綱吉。」
「へ?」
「僕の好きな人。綱吉。」
それだけ言い捨てて、さっさと踵を返して歩き出した。
きっとぽかんと間抜けに立ちすくんでいるんだろう。
そう思った僕の予想は外れて、袖を掴まれてがくんと足を止められる。
振り向くと、そこには真っ赤になった綱吉が居て。
「あのっ…俺……その、俺も……」
そどろもどろに告げられた小さな言葉は、一文字も逃すことなく僕の耳で捉えることが出来た。
すき って
きっと今年はいい年になる そう感じさせるほどの出来事
(きっと神様が居るのなら、誰かの運命と取り違えたのだろう。)
「よかったですね、雲雀さん」
「何が?」
「雲雀さんが大凶でも、俺が大吉ですから、相殺して吉ですよ。だって、これから何時も一緒にいられるでしょ?」
ね?と首をかしげてはにかんで笑う綱吉が、とても