「わー!雲雀さん、あけましておめでとうございます!」
「おめでとう」

 

日付が変わる。
たったそれだけのことなのに、はしゃぐ子供を見て、思わず頬が緩む。
きっとだらしのない顔になっているんだろうと思っても、それを直す気にはなれなかった。

 

「そろそろ寝ようか。明日は出かけるんだし」
「はいっ。」

 

寝室に行く様に促すと、ランボは素直に従った。
あくびをしながら、明日の予定を頭の中で確認する。
買い物。一日中。
彼にどうしても、とお願いされては無下に断るわけにも行かず、人の多いストリートへ買い物へ行く事になっていた。
特に重要な予定が入っていたわけでもないから構わないけれど。

 

(……わざと入れなかったのか?)

 

ふと、甘さの抜けきらない綱吉を思い出して、眉を寄せる。
何となく操られているようで気に喰わない。

 

(彼というよりは、彼の家庭教師か)

 

やけに人の奥底を見透かすことに長けている家庭教師だ。
もしかしたら何か口出ししたのかもしれない。
その証拠に、他の守護者はあわただしく仕事で走り回っている。
面倒な事をしなくて済むのは良いが、なんとなく、やはり気に喰わない。

 

「雲雀さんっ」

 

ソファーに腰を下ろしたまま考えていると、ひょこっとランボが寝室のドアから顔を出した。
はっと我に返ってそっちを見ると、枕を抱えたままにこにことこっちを見ているランボと目が合う。

 

「良い夢、見られるといいですねっ」
「夢?」
「初夢ですよっ」

 

知らないんですか?と、何処かはしゃいでいるランボに問われて、一応知っていると答えた。
確か、初夢は正夢になる、とかなんとか。

 

「俺、絶対雲雀さんの夢見ますね!」
「………は」
「雲雀さんと一緒に居る夢を見ます!」

 

そうすれば、今年もずっと一緒ですね、とはにかんで笑うランボを見て、
さっきまでのイライラなんかどこかへ消えうせてしまった。

 

「………」
「雲雀さん?」
「…僕の夢を見るのは構わないけど、夢の中で殺さないでね」
「え。」

 

表情が凍り付いて、どんどん青ざめていくランボを見て、クスクスと笑いがこみ上げてくる。
仮に夢の中で死んだとしても、そう簡単に死ぬわけはないのに。

 

「え、や、嫌です。俺、そんな夢見たら……」

 

どうしよう、と、まだ見たわけでもないのに焦りだす姿を見て、少しいじめすぎたかもしれないと思った。
けれどこんなに僕の事で一生懸命になるランボを見ていると、少し気分が良い。

 

「寝るよ、ランボ。」
「え、あ、でも」
「僕が一緒に寝てあげる。だから良い夢見てよね」

 

固まるランボの手を引いて寝室へと向かう。
遠慮がちに握り返されたその手は、暖かかった。

 

 

 

(きっと今年も去年と同じように、僕は彼を愛すのでしょう)