君と一緒に居られたなら、それだけで

 

 

イブ

 

 

ふと窓の外を見れば雪が降っていて、明日はまた面倒な事になると思って舌打ちをする。
今日は一応恋人の居る人にとっては良い日のはずだが、雲雀にとって記念日のようなものはどうでもよかった。
そもそも昔から関心が無いと言った方が正しい。
寧ろ、こういう日は群れが増えてわずらわしいと思って居たほど。

 

「雲雀さん、見てくださいよ。雪が降ってますよ。」

 

しかし、こうしてはしゃぐランボを見ると、苛立つ気持ちが落ち着いていく。

 

「分かってるよ。」
「明日積もると良いんですけどね」

 

さっきまでは面倒な事にしか思えなかった雪も、ランボがそういうならそうなると良いと思ってしまう。
自分が明らかに昔と変わった事を自覚して、その違和感の無さに思わず自嘲気味に口元を歪めた。

 

「さっき、ボンゴレにケーキ貰ってきたんです。お仕事が終わったら食べましょうね」

 

にこにこと嬉しそうに笑うランボを見て居ると、力が抜けてしまうような気がする。
ソファーでホットココアを飲んで、鼻歌を歌っているランボ。
そこから目の前に積まれた書類に目を移して、やるせない疲労感に襲われた。

苛立ちが募って来ながらも、よどみなくペン先は書類の上をすべる。
そもそもこの仕事は元は綱吉のモノであって、雲雀のモノではない。
年の瀬でいろんな仕事が立て込んできたというのに、ボンゴレ十代目である綱吉の仕事ぺースは相変わらずで、結局半分が雲雀に回ってきた。
他にも守護者に満遍なく配られたらしいが、ランボの分も雲雀が担当しているため、他の守護者の倍の仕事量になる。

体を動かす仕事は大歓迎だが、デスクワークはやりたくない。

 

「………雲雀さん、大丈夫ですか?」

 

はっと気が付くと、ランボが横に立っていて、心配そうにこっちを見ていた。
しまった、と思いつつも、顔に出た不機嫌さを隠す気にはなれない。

 

「大丈夫だよ。」
「今朝からずっとですから、疲れましたよね」
「それは、もちろん。」
「今、コーヒー淹れますね。」
「待って」

 

部屋を出ようとするランボの腕を掴んで引き止めると、ランボはきょとんとした顔で雲雀を見た。
少しの間があったと、雲雀が視線を泳がせて、小さく呟く。

 

「いらないから、そこで待ってて」

 

直ぐに終わるから。と付け足せば、ランボは嬉しそうに笑って頷いた。
思った事全てを言った訳ではないが、どうやら理解してくれたらしい。

 

「………ランボ」
「はい」

 

ソファーに座りなおしたランボに、書類を見ながら話し掛ける。
なんて言葉で表せば良いのか、と少し考えて、結論を口に出す。

 

「好きだよ」

 

さらりと、特に感情を込めたわけでもなく。
名前を呼ぶのと同じくらい簡単に呟かれた言葉だった。

 

(……少し要約しすぎたかな)

 

無駄な言葉を省いて行ったら、結局これしか残らなかったわけで。
愛してるとかそういう言葉ではなくて、コレ。

相手に全部伝わっているのか、反応が無くて分からない。
少し不安に思って、横目でランボを見た時だった。

 

「俺も、大好きです。」

 

嬉しそうに、はにかんで笑うその顔が

 

(嗚呼、やっぱり僕は君が)

 

早くこの仕事を終わらせてしまおう。
そうすれば、きっと彼はもっと笑ってくれる。

 

 

 

気付いてしまった。僕はもう君なしじゃいられない。

君を守って大切に大切に甘やかして、もっともっと愛したいよ!