唇に触れた柔らかい感触が、俺を現実へと引き戻す。

 

「目を開けて」

 

誰が君に触れてるのか、しっかりとその目に移して

 

 

 

遊戯

 

 

 

小さく震えるランボを安心させるように頬を撫でる。
触れた瞬間にピク、とひときわ大きく震えたのを感じた。

 

どきどきと心臓が耳の直ぐ傍にあるみたいに五月蝿く鳴る。
雲雀さんの手が俺の頬に触れたのを感じて、思わず震えてしまった。
嫌だから、じゃなくて、緊張して。

 

「ランボ」

 

名前を呼べば、また震える小さな体。
少し力を込めれば壊してしまいそうで、頬を撫でることしか出来ない。
この腕に閉じ込めて、きつく抱きしめてしまいたい衝動に駆られるけど。

 

低くかすれた声で名前を呼ばれて、心臓の音がますます大きくなった。
甘さを含む吐息が耳にかかって、それはもっと酷くなる。
すがり付いて抱きついてしまいたい衝動を必死に押さえ込んだ。

 

ぎゅっと目を閉じるランボの瞼にキスをする。
わずかな眼球の震えを唇から感じ取って、ぺろりと瞼を舐めた。
小さく悲鳴が小さな唇から漏れて、思わず笑みを深くする。
頬をなでていた手を滑らせると、彼のお気に入りの牛柄のシャツに辿り着いた。
わざと、ゆっくりとボタンを外す。

 

ぷち、とボタンが外れる音がして、シーツを掴む手に一層力が入った。
雲雀さんの含み笑いが聞こえてきて、顔に熱が集まった。
緊張をほぐすために深く息を吐くと、思ったより熱が篭っていて驚いた。
唇が乾いて、舌で舐める。
キス、したいな。

 

初々しい反応を示す彼に気をよくして、ボタンを外していく。
ゆっくりと吐いたランボの息が髪にかかって、一瞬身を硬くした。
ちらりと顔を仰ぎ見れば、真っ赤になった顔で唇を舐める彼の姿が目に入る。
どくんと、心臓が大きく鳴った気がした。

 

「目を開けて」

 

こんなに緊張しているのに、今雲雀さんの顔を見たら。
心臓が割れてしまうんじゃないかと思うほど恥ずかしいのに、どうしてそれを要求するの?
分かっているはずなのに、とは思うけれど、言われた通りに目を開ける。
直ぐ近くに雲雀さんの顔があって、視線が絡む。
その目は何時も以上に優しく、けれどその奥に煌々とした光を灯していて、息を飲む。
まるで肉食獣に喰われる獲物のような錯覚に陥って、

 

ゆっくりと開けたランボの目には、薄っすらと涙が溜まっていた。
羞恥心から来るものなのか、恐怖から来るものなのかはわからない。
その目と視線が絡んだ瞬間、動揺したように瞳が揺れる。
しっかりと、僕を移す翡翠の瞳。
君を食べるのは僕だと、刻み付けて

 

「ひ…ばり……さん」
「黙って」

 

名前を呼ぶと、間髪いれずに雲雀さんに口止めされた。
言葉だけじゃなくて、その唇で俺のそれをふさがれて、頭が真っ白になって

 

深く深くキスをする。
唇を触れ合わせたら最後、止まらない。
貪るように、無垢な子供を穢す。
僕を欲しがるようになるまで、ずっと

この時改めて実感した。
嗚呼、僕は余裕が無い。

 

キスがこんなにも気持ちの良いものだなんて知らなかった。
何時も雲雀さんは唇を触れ合わせるだけのフレンチキスしかしないから。
深くて、息が苦しくて自然と息が上がる。
一度目を閉じて、もう一度開ける。
俺の目に映るのは、雲雀さんの顔だけ。

その顔が、とても苦しそうで
この人の総てを俺で満たせたら良いのにって、思った。

 

 

 

 

何時までもこのが続けば良いのに、と 思う