「君はやっぱり子供だね」
その言葉に、俺はまるで金槌で頭を殴られたような痛みが走った。
子供じみた恋
雲雀さんが仕事へ出てから暫く俺はぼうっとして外を見ていた。
雲雀さんと俺の年の差は10もあるわけで、雲雀さんから見たら俺はいつまでも子供のままなんだろう。
たとえ夢の中だってその差は縮まることはなくてその隣に立つことも出来なくて。
圧倒的に戦闘経験が少ない俺は雲雀さんとの任務に付くといつも足を引っ張ってばかりだ。
何度も守られてはその傷を雲雀さんが負う
やっぱり雲雀さんは子供が相手なのは嫌なんだろうか。
「…………雲雀さん」
それでも、絶対的な強さを持つあの人に俺はいつも憧れていて
一緒に居る様になって知った優しさに惹かれてどうしようもなくて
雲雀さんを名前で呼ぶことの出来るキャバッローネに嫉妬したり
ああ、俺もああいう風になりたいなぁ
そう思っていたら、突然視界が真っ白になった。
これはもしかしてまた昔の俺がバズーカーを使ったんだろうか。
10年前の今日、俺は何をしていたんだっけ なんて思っているうちに視界が晴れて、目の前に雲雀さんが現れた。
「え、わ、わあっ!?」
思わず飛びのいてしまう。
辺りを見渡すと此処は応接室のようで雲雀さんと俺の二人きりだった。
俺と同じくらいの年の雲雀さんが目の前に居て、ドキドキと心臓は跳ねっぱなしだ
「ひ、雲雀さん、やっぱり俺みたいな子供って嫌いですか」
「騒がしいのは嫌いだ。」
混乱しつつ疑問に思って居た事を口にすると、雲雀さんはきっぱりと俺に止めを刺した。
打ちひしがれて床にひれ伏してしまうと、俺に雲雀さんの影がかかる。
「何なのいきなり。」
「なんでもないです、すみません」
「そういえば君、あの牛の子供の未来の姿なんだって?」
顔だけを上げて俺を見下ろす雲雀さんを見る。
楽しそうに笑っているけれどその笑顔は優しそうじゃなくて、そう
まるで悪戯を思いついた子供のような
「随分様子が違うんだけど」
「よく言われます」
「ふうん、でも彼がこういう風になるのなら」
雲雀さんがしゃがみこんで、俺の頬を優しくなでた。
え、なんで急に、っていうか、その目はなんだかまるでいつも俺を見る雲雀さんみたいで、あの、その
「子供でも我慢してあげるよ」
雲雀さんの綺麗な形の唇がより釣りあがったけれど、目は酷く優しそうに見えて
ああやっぱりこの雲雀さんも雲雀さんなんだって馬鹿みたいなことを思った次の瞬間また視界が真っ白になった
戻ってきたら俺の秘蔵の飴が全部なくなってたりしたけど、もう俺はそんなことはどうでもよくて
子供でも我慢するって、つまりそれって俺の事が
「何してるの、ランボ」
背後から声が聞こえて、床にへたり込んだままびくりと身体を揺らす。
10年前よりも幾分か声は低くなっていたんだなぁと思いながらゆっくりと振り向くと雲雀さんがそこにいた
「おかえりなさい、雲雀さん。早かったですね」
「直ぐに終ったからね」
スーツのジャケットを脱いで暑そうにしている雲雀さんをじぃっと見る
綺麗な形の唇は昔と変わってないんだなぁとか鋭い眼光やその肌の色もやっぱり綺麗でしょうがない
整った爪と細く長いけれど男らしさを感じさせる無骨な手が俺の頭をわしわしとなでた
「何、そんなに見て」
「あ、あの、今10年前に行ってきたんですけど」
「ふうん。僕が居たの?」
「はい。それで、その、俺、子供だけどやっぱり雲雀さんが好きなんです。傍に居させてください…なんて」
子猫ちゃんを口説くときはあんなに簡単に言葉が出てくるのに何故か雲雀さん相手になると口説き文句どころかそのまんまの言葉しか出てこない
顔もきっと赤くなってしまっているに違いないし、目を逸らしてしまいそうなほど恥ずかしい
雲雀さんは少し驚いたような顔をしたあと、10年前の雲雀さんのような優しい目をしてこう言った
「いいよ。君は僕のものだから」
いつから俺は雲雀さんのものになってたんですか、と言おうと思ったけれど、それより先に雲雀さんの唇が俺の口を塞いでしまった
恥ずかしくて嬉しくて 慣れた様子の雲雀さんを見てやっぱり俺は子供だなぁなんて思ったりして
それでも雲雀さんが好きで居てくれるのなら、このままでもいいかな なんて