視界の端
ちらつく髪
翡翠の眼が、僕を見た
その視線の先
綱吉と仕事の相談をしている最中、視界の端にちらちらと牛柄のシャツがちらついた。
綱吉の家庭教師と話をしているらしいソレは、時折僕の視界に入ってくる。翡翠色の目を、僕に向けて
「……雲雀さん、どうかしましたか?」
「何が?」
「なんか、楽しそうですよ。」
今回の仕事の話しに殲滅は一言も出ていないのに、と、綱吉は怪訝そうな顔で僕を見た。
僕は自分の口元に手を当てて、視線を逸らす。
まさか、顔に出ていたなんて。
「……牛柄のシャツの子」
「…ランボがどうかしましたか?」
「さっきから、ちらちらと僕を見てるんだ。気付いてないとでも思ってるのかな」
別に隠すようなことじゃない、と判断して、さらりと口にする。
綱吉は少し驚いたように目を見開いて、ちらりと僕越しにランボを確認した。
「……あ、ホントだ。見てますね。」
「ひょこひょこ顔を出すから、面白くて。」
つい、ね。と言って口元を歪ませると、綱吉も小さく吹いた。
それにしても、一体何の用があるというのか。
話があるならさっさと話しかければいいものを、遠慮しているのだろうか。
肩越しに何気なくランボの方を見た瞬間、ぱちっと眼があった。
(……なんで、慌てて逸らすわけ)
何故か無性に腹が立つと同時に、もやもやとした気持ちが胸を渦巻き始めた。
一瞬この気持ちがなんだかわからなくて、少しの間思考する。
「あとで、ランボに聞いておきますから。」
「そうして。」
さらりと流して、仕事の話を進める。
けれど頭の片隅から、まだあの子のことが離れなかった。
どうしてこっちを見ていたのかが知りたくて。
あの翡翠の目の奥で、一体何を考えていたのか。
+++
(今思えば、この時の感情は恋そのものだったように思えるけど)
「雲雀さん?余所見しないでくださいよ…。」
はっと我に帰ると、目の前で拗ねたような表情で葡萄ジュースを飲むランボがいた。
それにクスッと笑って口の端を吊り上げて、眼を細める。
「何ですか…?」
「…君は今も昔も、僕の視線が欲しくてしょうがないんだと思ってね」
「な、なんですか、それ。」
「綱吉の部屋で仕事の話をしてた時…まだイタリアに来た最初の頃だったかな。君、ちらちら僕の事見てたよね。」
「え。あ、な、なんで知って……」
「後で綱吉に聞いたんだけど、君、その時からもう僕の事好きだったんだってね。」
「ああぁーっ!?ぼ、ボンゴレ言っちゃったんですか!?」
ランボが悲鳴のような声を上げて、顔を真っ赤に染め上げる。
茹蛸のようなランボを見て、またクスクスと僕は笑った。
(君は僕を好きになってもう長いというけれど、多分僕の方が君よりも)
今も いつも 好き